ウクライナでは、デジタルアクセシビリティを「努力義務」から法的義務へと格上げする新法が導入されつつある。目的は、欧州の基準に沿って、ウェブサイトやモバイルアプリが障害のある人を含むあらゆる利用者にとって使いやすいものとなるようにすることだ。企業にとっては、データ保護や消費者保護と並ぶ新たなコンプライアンス領域になる。
具体的に何が変わるのか
法律は、ウェブサイトやアプリ、公共機関のオンラインサービス、そして大規模な民間プラットフォームに対してアクセシビリティ要件を課す。参照点となるのはWCAGに類似した国際標準であり、コントラスト、ナビゲーション、代替テキスト、キーボード操作、字幕など、視覚・聴覚・運動機能に制約のある利用者に重要な要素が含まれる。
アクセシビリティは単発の改善プロジェクトではなく、継続的にモニタリングすべき品質項目として扱われることになる。法律は、組織内の責任主体や、アクセシビリティに関する情報公開および利用者からのフィードバック窓口についても定めている。
対象となる事業者
まずは金融機関、通信事業者、公共料金サービス、医療・教育機関、大型eコマースやマーケットプレイスなど、重要サービスの提供者が対象となる。その後、規制の成熟に合わせて対象セクターが広がっていく可能性が高い。
中小企業も例外ではない。移行期間や適用レベルに差はあっても、オンラインで商品を販売したり、欧州のパートナーと取引する企業は、いずれデジタルアクセシビリティの観点から評価されることになる。
導入スケジュールと責任
新法は、標準の段階的導入と一定の適応期間を前提としている。この期間中に、企業は自社のウェブサイトやアプリを棚卸しし、どのように基準に合わせていくかの計画を作成する必要がある。監督は、業種ごとの規制当局と、消費者保護および障害者の権利を所管する機関が分担する見込みだ。
継続的な不適合が認められた場合、罰金や、重大なケースではサービス運営の制限が課される可能性がある。デジタルチャネルへの依存度が高い企業ほど、規制リスクだけでなく評判リスクも大きくなる。
企業が今からできること
デジタルプロダクトを持つ企業にとって、この法律はアクセシビリティをプロダクト戦略とリスク管理の中心に近づけるシグナルと言える。現時点で取り組めるアクションとしては:
- 主要なサイトやアプリのアクセシビリティ診断を実施すること;
- 国際標準に沿った社内ガイドラインを整備し、デザインと開発プロセスに組み込むこと;
- 利用者がアクセシビリティ上の問題を報告できるフィードバックチャネルを整えること;
- 外部の開発会社やデザイナーとの契約にアクセシビリティ要件を明記すること。
投資家にとって、アクセシビリティへの対応状況はコーポレートガバナンスとプロダクト文化の成熟度を測る指標の一つとなる。
